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経済学の部屋


格差の拡大に警鐘が鳴らされる中、トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」が話題になっています。 その中で、「r>g」という不等式が、資本主義の宿命であるかのように、扱われています。資本分配率が上昇するのは、どんな場合かを、私なりに考えてみました。


テーマ: d(Yc/Y)/dt>0(資本分配率が上昇する)となるのは、どんな場合かを、ソローモデルに基づいて、考察する。

      (Ycは、所得のうち、資本への分配分)


結論:d(Yc/Y)/dt>0となる(資本分配率が増える)のは、以下の場合である。

    (1)dg/dt>0(成長率g= ∆Y/Y が年々増加している、g>0ではない!)の場合   

       dr>0(資本収益率が上昇する)のときに、資本収益率の経済成長率に対する弾力性が1より大きいとき。 

       ※dr<0(rが減少する)のときは、資本家への分配率が上昇することはない。 

     (2)dg/dt<0(成長率が減少していく、g<0ではない!)の場合

       dr>0(rが上昇する)のとき

              or

       dr<0(rが減少する)ときは、rのgに対する弾力性が1より小さいとき


    ※資本分配率が上昇するのは、rとgの大小関係の問題ではなく、結局、rのgに対する弾力性の問題である。
 
    ※先進国における現実経済は、中長期的には、(2)のケースが常態であると思われるので、やはり、資本分配率が
      上昇する可能性が大きいのではないか。だとすれば、何らかの政策的措置が必要となるのではないか。
     
     下記③式を前提にすれば、貯蓄率(資本所得からの貯蓄率と賃金からの貯蓄率の加重平均)の減少は、資本分配率を減少させる。
      だとすれば、課税(なるべく経済全体の貯蓄率を引き下げるような課税)等の政策が、資本分配率の上昇を抑えることになる。
      ただ、貯蓄率の引き下げは、長期的には成長率の低下につながるので、これを補うような技術進歩が必要となる。

     人口減少が、資本分配率が上昇する原因の一つとなりうる(最後の「現実への妥当性」を参照のこと)。従って、人口増加を促すような
     政策も、資本分配率の上昇を抑えることができる。


  理由説明

     Yc/Y=rK/Y=r×v (r:資本収益率ないし配当率 v=K/Yで資本係数) ・・・① 
     
     ここで、ソローモデルであり、g=s/v(s:貯蓄率)なので、①式に v=s/gを代入して、Yc/Y=r×(s/g)=(s r)/g ・・・②となる。

     ここで、sは定数(>0)であるとして、②式の両辺を時間tで微分すると、

     d(Yc/Y)/dt=s× (dr/dt×g-r×dg/dt)/g^2  ・・・③ を得る。

     よって、d(Yc/Y)/dt>0となるのは、③式の分子=(dr/dt)×g-r× (dg/dt)>0、即ち、 (dg/dt)×r<(dr/dt)×gとなる時である。

  g>0として話を進めます。(g<0のときは、結論が逆になるだけです)


  (1)dg/dt>0(成長率が年々増加している)のとき

     r<(dt/dg)×(dr/dt)×g
     r<(dr/dg)×g

     r>0なので、1< (dr/r)/(dg/g) ・・・④ となる。

   dt>0なので、dg>0に注意して、以下の結論を得る。


    (ア)dr<0のとき(資本収益率が減少するとき)

       ④式は絶対に成り立たないので、資本分配率は必ず減少することになる。
       (但し、経済成長率が年々増加している状態で、rが減少することはまずないと思います)

    (イ)dr>0のとき

       ④式の右辺>0となるので、弾力性の問題となり、資本収益率の、経済成長率に
       対する弾力性が1より大きいとき、資本分配率は増加する。


  (2)dg/dt<0(成長率が減少していく)のとき
      
        1>(dr/r)/(dg/g) ・・・⑤
     
        dt>0なので、dg<0に注意して、以下の結論を得る。

     (ア)dr<0のとき

        ⑤式の右辺>0となり、rのgに対する弾力性が1より小さいときに、資本分配率は増加する。

     (イ)dr>0のとき

        ⑤式の右辺<0なので、⑤式は恒等的に成り立つから、常に資本分配率は上昇する。

現実への妥当性

  短期的には「dg/dt<0(成長率の減少)」は普遍的だとは言えないだろう。しかし、ソローモデルは中長期に適用できるモデルであり、
  例えば10年くらいのスパンで見れば、gの低下はトレンドだと言ってもいいのではないか。現に、先進国では、n(人口増加率)が減少して
  行っており、これを成長率の上限と考えると、dg<0は、常態と言ってもよいだろう。つまり、上記(2)のケースが現実だと言ってもよい
  だろう。だとすれば、人口減少も、資本分配率上昇の要因となってしまうことになる。



                                                                   東大個別指導ゼミ